縁の管理人 第3章

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襖を開ける所作一つをとっても非常に美しい。 (綺麗な人……)  ゆっくりと上げた顔は目元がキリッと引き締まり、明らかに使用人の方々とは佇まいが違った。思わず連と二人揃って居住まいを直してしまったが、その様子を見た女性は柔らかく目を細め、唇に弧を描いた。 (……あれ?)  その笑顔に既視感を覚えた。初めて会ったはずなのに、初対面な気がしない。どうしてだろうか、と悩むも、答えはすぐに見つかった。 「佳苗の母でございます。いつも娘がお世話になっております」 「ああっ! 佳苗のお母様でしたか!」 「お、お邪魔してます!」  なんと女性は佳苗のお母様であった。どうりで笑顔に見覚えがあるわけだ。口数が多くいつでも元気で明るい佳苗のお母様にしては、非常に落ち着きがあり物静かに見えるため、すぐには気が付かなかったが、よく見れば目の形がよく似ている。 「お二方とも支度はお済みですね。積もる話もございますが、ご挨拶はまた後程に。急かすようで申し訳ございませんが、移動致しましょう」 「移動ですか? 一体どちらに?」
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