縁の管理人 第3章

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「当家には霊媒師が複数おりまして、依頼は全て担当制となっております。ちょうど今日は佳苗の担当日なので、佳苗も儀式の間で準備を進めていることでしょう。……さて、今日の依頼内容ですが……」  佳苗のお母様が言うには、今日行う霊媒の依頼は、若い男女二人組からのものだそうだ。なんでも、二人は近々結婚を控えていて、それを数年前に他界した男性の母親に伝えたいのだと言う。  父を早くに亡くし、女手一つで育ててくれた母。しかし、その恩返しをする間もなく、無理がたたったのか、病気で亡くなってしまったそうだ。 「今際の時にも、その母は息子を一人残してしまうことを悔やんでいたそうで。きっと心配しているだろうから、元気でやってること、共に歩いてくれる人に出会えたから安心してほしいと、そう伝えたいそうです」 「そうなんですね……。辛いですけど、素敵な話ですね。……あの、一つ質問してもいいですか?」 「はい、なんでしょう」 「その、こういった依頼はおそらくたくさん頂くのだと思いますが、依頼を引き受けるに至った理由はなんですか? やはり、叶えてあげたいって思ったから、引き受けたんですか?」
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