縁の管理人 第1章

18/65
前へ
/186ページ
次へ
 ――そして、先程抱いた疑問を、私たちはすぐに理解することになる。 「えーっと。あのー、入りますよー」 (自分の部屋なのに断りを入れるのって、違和感あるな)  部屋の外から声をかけ、中の様子を伺う。何かが動いたような物音がしたけれど、それ以外に返答はない。 「沈黙は了承と捉える、ってことで! しっつれいしまーす!」 「あっ、ちょっと、遥! もう」  どうしたものかと悩んでいると、遥は私の遠慮などお構いなしに襖を開いた。 「……」 「……」  目の前に広がる光景に、私たちは言葉を失くした。  でんと構えた部屋の中央には、こんもりと山を作る羽毛布団がある。もちろん、私の布団だ。中にいるのが誰かなんて、考えなくてもわかる。だが、一体彼は何がしたいのか、私たちにはさっぱりわからなかった。 「……あのー」 「※◆×◎*△!!」 「うん。何言ってるかわからないから、それ脱いでもらっていい?」 「……! ……」  布団越しでは彼の声がはっきりと聞こえない。遥が瞬時に返答するも、彼は沈黙するだけで動かない。 「……結衣」 「……うん」  このままでは、埒が明かない。遥に頷き返すと、私は布団を思い切り捲り上げた。 「どわっ!?」     
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加