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すると、布団はあっさりと剥がれ、中から体を小さく折りたたむようにしてうずくまる少年が現れた。
「か、返せ!」
「あっ! ……ってそれ、私のなんだけど」
身を隠すものを奪われ、驚いたように目を丸くした少年は、私の手から無理矢理布団を取り上げると、再び体に巻き付けた。
「だ、誰だ!」
「家主だけど」
「家主!? お前、この妖怪屋敷に住んでるのか!?」
「は? 妖怪屋敷って……また随分な言い草だね。確かに古いけど、そんなに陰気じゃないと思うけど」
少年の口から発せられた言葉に耳を疑い、つい返答に怒気を含ませてしまう。
(失礼な人。……でももしかして、参拝者が減って廃れ始めたせいで、そんな噂が出回ってるの? ううん、この子はさっきまで寝てたんだもん。ここが神社だってことも知らないよね)
では、少年がこの離れを妖怪屋敷と表現した根拠は一体なんなのだろう。その疑問は意外なところから明らかになった。
「この家、何かいるだろ!」
「何か、って?」
「なんかこう……見えない何か、だよ! 気配がするかと思ったら、たまに笑い声みたいなのも聞こえるし、妖怪の類じゃないのか!? お前には聞こえないのか!?」
「え?」
姿が見えない何か。気配、笑い声。妖怪ではないとしたら、それはもしかすると――
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