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儀式を終えると、夫婦は笑顔で神社を去っていった。神子もまた穏やかな笑顔で彼らを見送ると、くるりと体を反転させた。
「結衣(ゆい)、また来てたのかい?」
「うん! おばあちゃんのじゅつ、みてた!」
襖の影から姿を現したのは、幼い少女。結衣と呼ばれたその少女は、とたとたと足音を立てながら祖母である結のもとへ駆け寄る。
「あのね! おばあちゃんのじゅつはー、すっごく、すごーく! きれいなの! きらきらしてて、みてるのすきなの!」
「そうかい。結衣もいつかはおばあちゃんと同じことが出来るようになるさ」
結がやや乱暴に結衣の頭を撫でてやると、結衣は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「ほんとう? わたしもできるようになる?」
「もちろんさ。でも、ちゃーんと修行しないと駄目だからね」
「うん! わたし、がんばる!」
「その意気さね。おばあちゃんは結衣の成長が今から楽しみだよ」
仲睦まじい祖母と孫のやりとり。それは見ているものには微笑ましく、二人にとっては何者にも変えがたい幸せな時間であった。
それから結衣は数年の修行の末、結の跡を継いで紬喜神社の神子となる。
――はずだった。
「結衣、いつまで寝てるつもりなの! 早く起きなさーい!」
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