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しまった、と思った時にはもう遅い。清を認識できない彼の前で、つい声をだして清をいさめてしまった。みるみるうちに、少年の目が不審なものを見るような眼差しへ変わる。どうしたものかと固まっていると、隣からパンッと軽く柏手を打つ音が聞こえた。
「まあまあ。ここには確かにあなたが言うとおり、何かいるのかもしれないけど、まずはあなたが元気みたいでよかったわ」
「え、あ、おわ!?」
気まずい空気を壊すように、遥が明るい声音で少年に語り掛ける。少年が狼狽するのもお構いなしに、少年の額へと手を伸ばす。
「うん、熱はないみたいね。体はどう? だるいところは、ない?」
「へ!? あ、はい……ないです……」
(おお! あれだけ騒いでたのに大人しくなった!)
遥は曲がりなりにも、美形で売っているモデルだ。見目の整った異性に至近距離で見つめられれば、相当慣れていない限り目が泳ぐのも仕方ないだろう。
(まあ、男なんだけどね)
それをわざわざ教えて、夢を壊す必要もあるまい。半ば温かい目で静かにその光景を眺めていると、不意に少年が気付いた。
「あ、あの……、も、もしかして……HARUKA……?」
「あらー、私のこと、知ってるの? 嬉しいー!」
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