縁の管理人 第1章

21/65
前へ
/186ページ
次へ
 しまった、と思った時にはもう遅い。清を認識できない彼の前で、つい声をだして清をいさめてしまった。みるみるうちに、少年の目が不審なものを見るような眼差しへ変わる。どうしたものかと固まっていると、隣からパンッと軽く柏手を打つ音が聞こえた。 「まあまあ。ここには確かにあなたが言うとおり、何かいるのかもしれないけど、まずはあなたが元気みたいでよかったわ」 「え、あ、おわ!?」  気まずい空気を壊すように、遥が明るい声音で少年に語り掛ける。少年が狼狽するのもお構いなしに、少年の額へと手を伸ばす。 「うん、熱はないみたいね。体はどう? だるいところは、ない?」 「へ!? あ、はい……ないです……」 (おお! あれだけ騒いでたのに大人しくなった!)  遥は曲がりなりにも、美形で売っているモデルだ。見目の整った異性に至近距離で見つめられれば、相当慣れていない限り目が泳ぐのも仕方ないだろう。 (まあ、男なんだけどね)  それをわざわざ教えて、夢を壊す必要もあるまい。半ば温かい目で静かにその光景を眺めていると、不意に少年が気付いた。 「あ、あの……、も、もしかして……HARUKA……?」 「あらー、私のこと、知ってるの? 嬉しいー!」     
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加