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「ここは神社。……の離れで私の家。私は神子……見習いで、遥は私の教育係なの」
まずやるべきは、連の事情を聞き出すことではなく、連を安心させることだ。そのためには、連が疑問に思っていることに回答する必要がある。
「君が感じている〝何か〟の気配っていうのは、勘違いじゃない。その正体は、この神社に昔から住んでいる精霊だよ」
「精霊……?」
「結衣」
遥は注意をするように、静かに私の名を呼んだ。一般人である彼に神道にまつわる話をするのは、褒められたことではないだろう。けれど、それを承知の上で、私は連を安心させたいのだ。
そして、その甲斐あったのか、今まで私の言うことを無視してきた連だったけれど、ついには私の方を向いて返事をしてくれた。そのことにほっとしながら、話を続ける。
「そう。全ての大地や自然には、魂が宿っている。それらが長い年月をかけて力をつけ、形作られるようになると、精霊になる。ここにいる精霊たちは、私たち神職の者と共に暮らし、力を分けてくれているの。君が倒れていることを私に教えてくれたのも、木霊って言う精霊の一種。悪事には関わらないし、いい子たちばかりだよ。例えば……清」
「はいよ」
名を呼ばれた清は、少年の目の前をサッと通過した。その拍子に、連の前髪が風に揺れる。
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