縁の管理人 第1章

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 頭を捻っていると、連が口を開いた。先程までの嫌悪感のようなものは見受けられない。どうやら恐怖心を取り払うことには成功したようだ。 「なに?」 「お前、さっきここが神社だって言ったよな。それって、紬喜神社のことか?」 「そうよ。正しくは、紬喜神社の離れだけどね」 「本当か!?」 「うわっ!?」  掴みかからんとする勢いで、連が近付いてきた。反射的に上体を後ろに反らしたが、気付けば両手首を掴まれている。 「俺、ここに来たかったんだよ! 山道は長いわ雪は降って来るわで、本当に辿り着けんのかと思ったけど、そうか、ここが紬喜神社か。倒れて目冷ましたら目的地って、はー、俺ラッキー!」 「……」 「……」  今まで大人しかった連はどこへ行ったのだろう。遥と二人、今日一番のテンションの上がり様についていけない。 「なぁ、ここって何でも願い叶えてくれんだろ!? 俺の願い、叶えてくれよ!」 「は……、はぁ!?」  何の脈絡もない突然の依頼に、素っ頓狂な声をあげてしまった。けれど連はそんなことなどお構いなしに、私の両手首を握る力を強めながら迫って来る。 「なぁ頼むよ。俺、本当に困ってんだ。ここって縁結びの神社で有名なんだろ? だったら、俺の願いくらい簡単だって!」 「そ、そんなこと急に言われても、全然簡単じゃない……」 「頼む! この、とーり!」     
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