縁の管理人 第1章

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 三月となり、この神社のある紬喜山からも、ようやく雪が融け始めたところだ。遥の言うように、怪我の可能性を考慮し休止していた走り込みのトレーニングも、再開するにはちょうどいい頃合いではあるだろう。けれどあまり体を動かすことが得意ではない私にとっては、あまり嬉しくない状況だ。 「はぁ……」 「返事は?」 「……はい」 「クスクスッ、相変わらず結衣は遥には勝てないね」  清は楽しそうに笑う。後継者として腕を磨かなければならない身としては、いかに嫌がろうとも、逃げられるものでもない。渋々返事をすると、遥は満足そうに頷き、お味噌汁に口を付けた。 (修行……ね)  温かいお味噌汁で喉を潤しながら、改めて今日の夢について思い返す。  祖母が神子の仕事をこなし、私はそれを傍で眺めている――今となっては遠い昔の光景だ。  神子の務めをこなせる者がいないこの神社は、その役目を休止せざるを得なく、今は急ぎ後継者を育てている状態だ。  そして、その後継者とは、本家直属の跡取り――私ということになっている。 速やかに神子としてのお務めをこなせるようになるためには、日々の修行が必須条件だ。 (……ってことは、わかってるんだけど……)  修行の必要性も重要性も重々承知している。けれど、早く祖母のような神子になれと言われても、私には自分が跡取りとしてお務めに励む姿が全く想像できないのだ。後継者の実感が未だに持てない。 (それに私は別に、後を継ぎたいわけじゃないし……)     
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