3話 如月弥生のKISS KISS XXX!

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3話 如月弥生のKISS KISS XXX!

如月弥生のKISS KISS XXX!  千葉市美浜区海浜幕張。海岸沿いの埋立地に何棟も立ち並ぶ真新しいマンション群。その中で、ともすれば女の子と見紛う顔立ちの、水口祐介。彼は普段、どんなに直射日光を浴びても、絶対に太陽に灼けない頑固な色白で、しかも全く無駄のない、スレンダーなボディー。きれいに切りそろえられたワンレングスの髪には、キューティクルの輝きすら見て取れた。  このように、彼のルックスは同年代の男子と普通に比較してはいけないほど、ある意味では別格だった。彼を知らない人が、彼の姿を遠くから見ていると『このひとは随分背の高い女の子だな』と見間違いそうになるほどだ。  普段はとてもコンピュータとは無縁の生活をしていそうなミズグチだったが、彼にはもうひとつの顔があった。パジャマのまま、夜な夜な、ネットサーフィンをしていた。サーチエンジンで検索をかける。寝食を忘れるとは、こういう状態をいう。  彼はごく普通の六畳間のベッドの上で寝そべりながらキーを叩き、マウスを操作していた。天井からぶら下がる蛍光灯の常夜灯と、枕元に置いている卓上用の蛍光灯で、辛うじてモニターの周りが明るい。  水口祐介。彼は、志望する高校に合格したばかり。それにしては、操作するパソコンの性能が半端じゃない。現在考え得る、最速のプロセッサ。メモリや周辺機器は最大限まで拡張してあり、素人が触るパソコンにしては、自動車に例えれば『3ナンバーをつけた高級外車』なみの性能を誇る。「オラッ、オラッ、俺様のお通りだ、どけどけどけどけどけえええー」ってな感じで、ネットワーク上をかっ飛ばす。いわゆる彼はこの年齢にしてすでに、俗に言う、「パワーユーザー」なのだ。  普通ならば、もっともっとマニアックに他人に自慢しても良さそうだが、彼は日常生活において、自分がパワーユーザーであることをおくびにも出さない。普通のユーザーから見れば「異常にチューンされた装置」を持つわりには、それを自分の「聖域」つまり「サンクチュアリ」として、クラスメイトにも余り明かさずにいた。
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