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『危なかった……若返ってて良かったよ、婆のままじゃ落としてた。はー、まったく。マルは相変わらず無茶するねぇ』
うにゃーん、なにがぁ?といった顔で婆を見上げる黒猫は喉を鳴らしてご満悦だ。
そんな二人を笑って見ていた鬼が語り始めたのはマルの事だった。
『マルさんはね、あなたがここに来るのを十年も待っていたんですよ』
『マルが私を……?』
『はい。だけどあなたが一度目に死んだ時、あなたには極楽行きの資格がなかった。それを知ったマルさんの悲しみよういったら、可哀そうで見ていられませんでした。それであなたに一年間の機会を差し上げたのです。そこであなたは頑張ってくれました。だからこうして、もう一度あなた方は逢う事ができたのです』
そうだったのか、そう小さく呟いた婆は、たまらずマルを抱き締めた。
生きていた時も、死んでからも、助けてくれたのはいつだってマルだった。
そんなマルと極楽で一緒に暮らせるなんて……ああ、なんて幸せなんだ。
『マル、ありがとう』
ニャニャーン!
嬉しそうなマルの返事が、極楽浄土の天空高く元気に走り抜けていった。
了
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