第1話 キャラバン「リップス」スタート!

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『む、娘を帰せー! 今すぐにだー!』 『くそ! 少しはじっとしろ! 暴れるな!』 『そうよ、どこの野蛮人? おとなしくしなさい、ってば!』  チェルダードが呼びかけた。「カイザル、リーム、もう軍の皆さんが来られたので、後の事はこの東部軍管区司令部の方々にお任せして、旅を続けようじゃないか、のう?」 『じゃあ、退却すっかー!』 『そうだな』 『金ぴかのオッサンじゃあね!』 『どこへなと行け、勝手にしろ』  ディルジアが怒りをむき出しにして盾や矛を振り乱すが、ビザリナ軍当局のムーヴァーに取り押さえられてしまう。軍関係者は彼をなだめるのに必死だ。 『どうか、本国へお帰りください』 『お嬢さんは政治亡命を希望なさっております』 『くそっ、この馬鹿力ムーヴァーがっ! わしゃ認めんからな!』  とか何とか言いながら、チャタ・ディルジアは、リズアーモの国境を越えて、本国ファビオ側に一旦逃れた。……ここで問題になって来るのは、首都ジェンツ行きの特別列車だ。駅員、運転手、車掌は口々にこう語るのだった。 「主賓が逃げちゃダメだろ……」 「ビザリナ鉄道としては、ここからカラで走る訳にも……」  というわけで、ファビオ鉄道は、特別列車の折り返しをしたのだった。
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