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『む、娘を帰せー! 今すぐにだー!』
『くそ! 少しはじっとしろ! 暴れるな!』
『そうよ、どこの野蛮人? おとなしくしなさい、ってば!』
チェルダードが呼びかけた。「カイザル、リーム、もう軍の皆さんが来られたので、後の事はこの東部軍管区司令部の方々にお任せして、旅を続けようじゃないか、のう?」
『じゃあ、退却すっかー!』
『そうだな』
『金ぴかのオッサンじゃあね!』
『どこへなと行け、勝手にしろ』
ディルジアが怒りをむき出しにして盾や矛を振り乱すが、ビザリナ軍当局のムーヴァーに取り押さえられてしまう。軍関係者は彼をなだめるのに必死だ。
『どうか、本国へお帰りください』
『お嬢さんは政治亡命を希望なさっております』
『くそっ、この馬鹿力ムーヴァーがっ! わしゃ認めんからな!』
とか何とか言いながら、チャタ・ディルジアは、リズアーモの国境を越えて、本国ファビオ側に一旦逃れた。……ここで問題になって来るのは、首都ジェンツ行きの特別列車だ。駅員、運転手、車掌は口々にこう語るのだった。
「主賓が逃げちゃダメだろ……」
「ビザリナ鉄道としては、ここからカラで走る訳にも……」
というわけで、ファビオ鉄道は、特別列車の折り返しをしたのだった。
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