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「それは……我が身が千切られるような思いがした……若き剣士に、未来を託したばかりに、元妻の生き死にさえ分からない。それに、クルクやリーム、レマーユは、未だに父親の顔を知らない……。何より無念なのは、敵国にイライザを渡してしまったことじゃ。西ビザリナ、つまりバイザル皇国が、あんな国だなんて知らなかったから、無念残念じゃよ」思わず、チェルダードが嗚咽する。
「じゃ、じゃあ……僕は……僕は……どうすれば……長老、気を確かに!」
「ああ、ちょっと思い出話が過ぎたようじゃ。居室に帰って昼寝をするので、船長グリシアくん、次のブルコニッツまでの航路を設定しておいてくれたまえ。元空軍少尉なんだろ?」
「そうです、主に、セントフェリーナの街を守る仕事を三年ほどしていました……」
「人生に無駄はない。嫌な兵役も、今となれば役立つものじゃ。だから人生に無駄はない」
「わかりました長老……船長を勤め上げてみせます」グリシアがきっぱりと言う。
長老が居室に帰り、しばらくしてグリシアは深い溜息をついた。ふと、コックピットを見渡すと、地上のキャッシャーの様子が1台のモニターに映っていた。何だか賑やかだ。どうやら、ラルタ・ニーナが、独自に取材を始めた模様だ。カメラマンは、クルクらしい。
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