第2話 報道記者2名さま、ようこそリップスへ!

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「キャラバンリポート、ビザリーニューズのラルタ・ニーナが、キャラバン・リップスを密着リポートする新番組です。第一回目は、ビザリナ北東部、ビザリナ第三の都市、メルグビッツ市からです。はじめに、リップスとは、あるキャラバンの名前なのですが、その規模が違います。一般的なジプシーの100倍はあろうかという取引実績、そう、いままさにメルグビッツ空港では、まさに、キャラバンのためのキャラバン、ジプシーのためのキャラバンとして、新たな賑わいを見せています。この船のキャッシャーは、左右に分かれて、売る側の貿易商人と、小口買いをするジプシーたちが集っています。リップスはその仲介役になって、利ざやを稼ぐ……と言えば語弊がありますが、一種の卸売業を展開している、ビザリナでも初かと思われる斬新なキャラバンです。それでは、次回は二週間後、ビザリナ北部、ブルコニッツ空港でお会いできる予定です。以上、ビザリーニューズの、ラルタ・ニーナが、メルグビッツからお伝えしました」ニーナが締める。クルクがカメラを回し終える。「カット!」クルクが叫ぶ。  撮影された画像をチェックするニーナとクルク。 「うん、これで良し。課長に見てもらおうかな、ほれ、伝送!」ニーナがボタンを押す。 「わ、ニーナさん、もう送っちゃうんですか?」クルクがびっくりする。 「映りも悪くないし、お店も忙しいし、あんまりかまけてらんないのよ」ニーナが応える。 「そういうもんですかねえ」クルクが訊く。 「そんなもんでいいのよ」ニーナが吐き捨てる。 「俺、会社員ってよくわからないなあ」クルクが言う。 「わたしは、むしろ今ホットなニュービジネス、キャラバンのためのキャラバンの方が良くってよ?」と、ニーナがうれしそうに言う。
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