第3話 ミイラ取りがミイラになる、ナーディル君!

5/12
前へ
/64ページ
次へ
メルグヴィッツ空港の朝  翌日――メルグヴィッツ空港の朝。昨日と同じで、よく晴れた空は澄み渡っていた。草原地帯の冷涼な朝の空気が、メルグヴィッツ空港に朝霧を生じさせていた。長老とカイザルは、地上で朝の体操を行っていた。これは、ビザリナ颱空拳(たいくうけん)と呼ばれる、全身に気を漲らせる運動だ。 「いいか、カイザル、ここは滑走路だ。地面を叩き割るんじゃないぞ!」 「ああ」  船長は、民間航空機会社のパイロットと一緒に天候調査。ついでに、パイロット連中と一緒に、パワーブレークファストを摂りに空港内へ向かった。船長は、こういったロビイストめいた作業がお得意のようだ。特に、空軍に在籍していたから、機長の中には彼を知る者がおり、思い出話を交わしたりしているという。 「お前、グリシア! 久しぶりー。お前が、今やあのリップスの船長なのかよ!」 「信じられないなあ。マスコミ新聞社の方はどうした?」 「ああ、ちょっとな……あの船の長老の口車に、まんまと乗せられたよ」 「へえー、キャラバンの船長ねえ、お前が……」 「さぞかし毎日が楽しかろう……定期航空路と違って」 「いやあ、胃に穴が開きそうな時もあるよ。お子様たちが無鉄砲すぎて」 「さて、霧がなかなか晴れそうもないんだが……」 「それは困ったな。駐機料金今朝9時までなんだよ、リップスは」 「追加かな」「追加だな」 「はー、あのどんちゃん騒ぎ、今日もまた始まるのか……」  グリシアは、アタマを抱えた。 「南の方向だったら、霧は晴れて来るぞ。セント・フェリーナとか行くには好都合だ」 「逆に、北側のブルコニッツとか、西側のウザビクとか、アーツウォークとか、首都ジェンツ方面は……」 「行けなくはないが、今日は霧が濃い。だいいち、国境地帯は、空軍機の護衛が要る」 「うーん、リップスのピッツリー機も、半分程度は武装解除しているし、昨日、ようやくバリア装置を付けたばかりで、とてもSFみたいな戦はできませんって」 「なるほどねー、武器を買うために商売、ってこともあるのか」 「詳しくは言えないけど、まあ、無くはないね……じゃ、分かった! 古巣のセント・フェリーナへ向かうことにする!」 「おう、頑張れよ!」  立ち去るグリシアを、笑顔で見送る、元空軍パイロットたち……。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加