第3話 ミイラ取りがミイラになる、ナーディル君!

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「いかんっ! ワシはコックピットに行く! カイザル、お前はムーヴァーの中で! それからレマーユ、お前は礼拝堂のシートに座ってベルトを締める! わかったな!」 「ああ」「はい!」      ◇ ◇ ◇ 『離陸10分前……』 「こんちくしょう、口を開きやがれ! さっさと食いやがれ! もう離陸だぞ!」 「お前らの施しは受けない」 「こら! ナーディル! なんて罰当たりな!」 「姉貴も姉貴だ、なんでこんなキャラバンなんかに……うおっ?」  リームに襟首をつかまれ、絞り上げられるナーディル。戦慄を覚えた。 「おいお前、黙って聞いてりゃ、こんなキャラバンたあ何だ?」 「ああ、我が弟ながら、もう付き合いきれない。リーム、もういいよ。もうじき離陸だよ」 「あ、ああ。そうだな、この女の腐ったようなへそ曲がり! ここでみっちり反省しろ!」 「そうね、ナーディルには考え直してもらわないと……今度怒ると、わたしも酷いわよ」 「……」 「ふんっ、行きましょ、リーム」 「そうだな、じゃあ、あたしはムーヴァーの中で!」 「私は、コックピットで!」  大空から見ると、一羽の白鳥のような、フランスのコンコルドのような姿の、ピッツリー7570の船体が、ゆっくりと誘導路上を動き始める。しばらく、メルグヴィッツ市とはおさらばだ。目指すは、聖都、セント・フェリーナ市。ブースターに点火されると、一気に身体に重力がかかってゆく。
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