0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いかんっ! ワシはコックピットに行く! カイザル、お前はムーヴァーの中で! それからレマーユ、お前は礼拝堂のシートに座ってベルトを締める! わかったな!」
「ああ」「はい!」
◇ ◇ ◇
『離陸10分前……』
「こんちくしょう、口を開きやがれ! さっさと食いやがれ! もう離陸だぞ!」
「お前らの施しは受けない」
「こら! ナーディル! なんて罰当たりな!」
「姉貴も姉貴だ、なんでこんなキャラバンなんかに……うおっ?」
リームに襟首をつかまれ、絞り上げられるナーディル。戦慄を覚えた。
「おいお前、黙って聞いてりゃ、こんなキャラバンたあ何だ?」
「ああ、我が弟ながら、もう付き合いきれない。リーム、もういいよ。もうじき離陸だよ」
「あ、ああ。そうだな、この女の腐ったようなへそ曲がり! ここでみっちり反省しろ!」
「そうね、ナーディルには考え直してもらわないと……今度怒ると、わたしも酷いわよ」
「……」
「ふんっ、行きましょ、リーム」
「そうだな、じゃあ、あたしはムーヴァーの中で!」
「私は、コックピットで!」
大空から見ると、一羽の白鳥のような、フランスのコンコルドのような姿の、ピッツリー7570の船体が、ゆっくりと誘導路上を動き始める。しばらく、メルグヴィッツ市とはおさらばだ。目指すは、聖都、セント・フェリーナ市。ブースターに点火されると、一気に身体に重力がかかってゆく。
最初のコメントを投稿しよう!