第3話 ミイラ取りがミイラになる、ナーディル君!

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セント・フェリーナへ急げ!  リップスの通信端末に、地方病院に滞在中のキャラバンから無線電話が入電した。ニーナが受電した。 「はい、こちら準正規軍リップス。応答願います」 『こちら、南メルグ総合病院の産婦人科の医師で、ミエモ・サンタッチャと申します。とても難しい症例の妊産婦さんが1名おられるのですが、これから、セント・フェリーナ市に行かれるそうですね?』 「そうですが、何か?」 『私を含めて、ご家族をセント・フェリーナ市へ連れて行ってくださいませんか』 「少々お待ちください……船長! 船長! 南メルグ総合病院ってここから何キロ?」 『約250キロだな。それがどうした?』 「医師と、身重の患者さんがいるの。今交渉中だけど、できれば船の速度と高度を落として!」 「わかった!」 「あのー、お待たせしました、速度と高度を下げて目視でそちらに向かっていますが……」 『助けて戴けるんですね?』 「退役軍人の指示を仰ぎます。お待ちください……長老、こうおっしゃっていますが」 「ワシに電話を代われ……もしもし。リップスの総責任者ですが、そちら、病院で何かおありのようですな」 『はい、どうしても2日以内にセント・フェリーナ市の病院へ届けないと、母子共に危ない状態でして……。ご主人も、憔悴しきっています……』 「それで、条件は?」 『移送にかかる運賃、キャッシュで250万ミント、先払いでお願いしたいのですが……』 「ふむ、なるほど。多少条件は悪いものの、お引き受けする方向で調整します。その場を離れずにもう少しお待ち願いたい。識別コードを発信して欲しいのじゃが……」 『コード910、救急搬送です』「コード950、受諾した」 『良かった、ありがとうございます!』 「では、船長に代わるので、ちょっとお待ち願いませんでしょうかのお」 『はい』 「もしもし、船長のジョマ・グリシアです。近くに滑走路か、広い道路はありませんか?」 『あいにく、河川敷しかご利用いただける場所はなく……』 「そこに垂直着陸を試みます。目印は何ですか?」 『5階建ての、建物の上に、ヘリポートがある総合病院です、草原地帯の中にあります。いま、屋上でシーツを振っています!』 「目視で見てますが……10キロ先、見えました! 目視で着陸します!」
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