第3話 ミイラ取りがミイラになる、ナーディル君!

10/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
『おお、来られた! リップスの皆さんが来られるぞ! 喜べ! 助かるぞー!』 「騒々しいなあ……あのー、危ないですから、本艦のバーナーからは、出来るだけ離れてくださいね! 着艦します!」  滑空式航空母艦、ピッツリー7570は、高度を下げ、轟音を上げて河川敷に着艦した。 「クルク、カイザル、リーム! 念のため武装して。もし異状があったら知らせて頂戴。じゃあ、行って!」 「分かった」「了解!」  そこは、一面に芝生が敷かれた総合病院で、コンクリートの壁面にはツタが生い茂っていた。そこへ、年の頃まだ20歳代とおぼしき白衣の医師と、助産婦、それに身重の奥さんと、付き添う旦那さんの姿があった。 「リーダーの、ナバス・クルクです」 「ミエモ・サンタッチャ、この病院の医師です。先ずは、お約束のキャッシュを……」 「はい、確かに受領しました。艦内には医務室がありますので、そちらをご使用下さい」 「はい、分かりました。誘導をお願いします」 「うあ、この奥さん、重い……カイザル、奥さん抱えられる?」 「任せておけ」「おおー! ひょいと抱え上げたわねー! お姫様だっこ?」 「どうもお世話になります、イガル・イントンと言います。先ほどの者が、妻のラファーニ・イントンと申します、どうかよろしくお願いします」 「いえいえ、お礼は、セント・フェリーナ市に入ってからでいいですよ、医務室近くの居室に誘導します」 「助かります」  各員は、左舷のハッチから、居室階目指して足早に進む。 『カイザル、クルク、リーム! 聞こえる? ニーナよ。扉を閉めたら、その人たちの警護をお願いします。よろしくね』 「あん? わかったってば姐さん……警護します」 「警護してりゃーいいんだね」 「分かった」 『頼むわよ』  滑空式航空母艦、ピッツリー7570が、垂直上昇を始めた。高度が次第に上がって行く。上空500メートル付近で水平噴射に変わった。高度をどんどん上げていき、上空1.8キロメートル(60,000フィート)のところで船長が叫んだ。 『みんな、何かにつかまれ、みんな! 緊急搬送スピードだ! 音速を超えるかも知れないぞ!  マッハ2.7ぐらいかな……ともかく、行けえええー!』  クルクは電卓を叩きながら考えた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!