第4話 第二の首都、セントフェリーナ

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「皆様こんにちは。キャラバン、リップスに同行取材している、記者のラルタ・ニーナです。前回、私がメルグヴィッツ空港のロケで、これからビザリナ北部のブルコニッツ空港へ行く、と申し上げましたが、その後の天候調査で北へ向かえないことが分かり、急遽予定を変更して、いまわたくしは、ビザリナ南部、古都、セント・フェリーナ空港に来ております。セント・フェリーナは、敬虔な祈りと、古い文化遺産に満ちた街であり、一種独特の文化圏を形成しています。そんな静かな都、セント・フェリーナ市でも、このようにキャラバンのためのキャラバン、ジプシーのためのキャラバンとして、リップスが活発に商取引を行っています。意外な事に、スタッフの老人自ら店頭に立ち、骨董品の品定めに当たっています。ここでの滞在は今日から3日間。国内線28番ゲートのボーディングブリッジからもお越しいただく事が可能となっております。また、在庫限定品の海の幸、小麦製品などは、はるばるリズアーモからもたらされたものです。このチャンスをお見逃し無く。以上、ビザリーニューズ社の、ラルタ・ニーナが、セント・フェリーナ空港からお伝えいたしました」 「はい、カット!」 「ふー、スポーツドリンクを頂戴、クルク!」 「ほらよっと!」 「サンキュー! あれ、いま試写見てるんだけど、あたし、こんなにおでこ光ってた? いやー、恥ずかしい!」 「汗かいてたから、誰でもなるよ!」 「撮り直しも面倒だし……仕方ない、本社へ送信するわ……ぽちっと」  一方、コックピットでは、イプス・カイザルが警備ついでに、いろいろな計器類のテストを行っていた。船が乗っ取られないように、常に警護しなければならない決まりになっている。カイザルがコックピットに座っているだけで、絵になるというか、頼もしい限りだ。  その頃、ムーヴァーの格納庫では、つなぎの作業着に着替えたナバス・リームと、ビザリナ風の普段着に着替えさせられた、チャタ・ナーディルが、ちょっとした問答になっていた。 「どうなんだ、お前、親父さんところへ帰るのか、それとも、姉ちゃんと行動を共にするのか、はっきりしなさいよ!」 「うるせえなあ……姉貴に付いて行くしかねえだろ? ムーヴァーだって動力炉壊されて!」 「鉄道で帰れよ。協力する気がない奴を食わしていけるだけの余裕はないからね!」 「じゃあ切符くれよ!」
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