第1話 キャラバン「リップス」スタート!

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第1話 キャラバン「リップス」スタート!

小麦畑でつかまえて(1)  ここは、ビザリナ共和国最東端の州、リズアーモ州。州都、リズアーモに近い、小さな農村の中に、なぜか、巨大な滑空式空母が一台……。 「ビザリナ準正規軍、リップスの始まりだ!」 「うむ!! まあ、ただの民兵とも言うがな」 「……伯父さんの軍人恩給が役に立ったな、クルク」 「そうだなあ、まあ、僕にはこんな船を買う余力なんか、ないもんねえ」 「ふう、退職金が、ほとんど滑空式空母に消えたわい」 「無茶な買い物したものねー」 「誰が無茶じゃリーム! お前にはクリームのような可愛らしく素直な女の子に育って欲しいと願って名づけたというのに!」 「あー、はいはい、お説教ならまた今度~」 「すばらしい空母ですわ。ね、お姉さま」 「お、お姉さまぁ? 気色の悪い言い方やめて、レマーユ!」  ピッツリー7570(Pittrie 7570)、滑空式航空母艦搭載の、ナローバンドレーダーが、ひとり滑空母艦に駆けてくる人影を発見した。(もちろん、民間に払い下げてあるので、重火器の類は、必要最小限にとどめているが)。 「リズアーモ駅より、麦畑を、誰かがここへ向かって駆けて来ます!」 「む! 誰じゃ。識別信号を発信せよ。身元確認じゃ。IDを持っていない奴なら、相手にせずに、飛び立つべきじゃ」 「レマーユ、識別信号を!」 「はいっ! あ、確認取れました! ファビオ国籍の女性、外交官IDです!」 「何だって?」 「離陸やめい! 離陸中止じゃ、クルク!」 「了解! って、外交官?」 「相手から、識別信号のリクエストが来ました!」 「リクエストを許可する。あくまでキャラバンとしてのレスポンスじゃ」 「詳細情報入りました。チャタ・ファーナ、十八歳、女性。麦わら帽子をかぶって、トランクを持っています。コード909、政治亡命信号受信!」 「何じゃと、政治亡命……ああ、面倒くさそうな雰囲気になって来おったわい……まあ、許可は出すが……コード910……」 「女の子で、政治亡命で、外交官特権~? やばーい、超やばーい」 「ディスプレイに写します。音声着信あり。リーダー、交信を!」
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