甘くて優しいカフェオレを

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甘くて優しいカフェオレを

 集中力が途切れたことで、混迷の中にいた意識が現実に戻っていく。  するとあれほどくっきりと見えていたモニタの画面が、とたんにぼんやりと曖昧なものになっていった。目の焦点がずれたことで、エクセル上の小さな数字の羅列を脳が意味不明の物体と認識した。  誰もいないフロアは、煌々とライトが照らされているが気味が悪いくらいに静かで、意識しだすと一層不気味さが増幅する。無機質な空間に居並ぶ電源の入っていないモニタ群もまた、自分以外の生き物がここにはいないのだと自覚させる。……痛いくらいに。  突然。  目の前のモニタの輝きが殺人的に鋭利に感じられ、わたしはとっさに眉間を押さえていた。そのまま目を閉じること、数秒。親指と人差し指でもんでいくと、その部分から顔全体へと血流が活性化されていった。     
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