おじいさんへ

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愛する貴方の初七日法要が終わりましたので、私の付いていた嘘を告白します。 おじいさん、ごめんなさい。 ずっと嘘を付いて隠していました。 恥ずかしいけれど、結婚する前から貴方が私の事を可愛いね、綺麗だねって言ってくれたから、私はそれが嬉しくて。 貴方の為に、可愛らしくて綺麗なままで居たいって思うようになったの。 二十代、三十代の頃は白粉はたいて紅を引いて、それだけで十分だった。 けどね、四十代に差し掛かると頬はブルドッグみたいに垂れて来るし、眉間と目尻にシワが出来るしでお化粧ではどうする事も出来なくなってきたの。 それでも私は貴方の「里江は変わらないね」を聞きたくて、化粧水と乳液と美容クリーム、高い物に変えました。 それでも五十を過ぎればそれも効果が出なくなり始め、流行りの美容グッズを買い漁りました。 還暦を迎え、その美容グッズは仏間の押入れに箱に詰めて蔵いました。 でも貴方に褒めてもらいたいと言う気持ちは変わらず、私は美容整形の手術を受けました。 度々、古い友人と旅行に行って来ますと言って出掛けたのは、全部整形の為でした。
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