おじいさんへ

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そして七十二の時に、お医者様には「もうダメですよ、保ちませんよ」と言われました。 私は、「そんな事を言わないで下さい」って泣きました。 おじいさんが嬉しそうに私を褒めてくれるのが、私の一番の幸せだったから。 私は持っていたもの全部投げ打って、 よく出来た機械になりました。 癌だったの。 余命三ヶ月の。 でも愛するおじいさんと離れたくなくて。 魂だけ先に天国に行かせました。 でもそのお陰で、老老介護も苦じゃなかった。 貴方が嗄れた声でも「可愛いね、何時までも変わらないね」って言ってくれたから。 年金も、十五年前から貴方の分しか貰ってませんでした。 これが、私の隠していた事。 貴方より先に死にました、なんてとても言えませんでした。 けれどこちらで貴方を見送ったから、そろそろ言ってしまおうって。 ねえ、おじいさん。 天国で私に逢ったら、またずっと一緒に居てください。 そしてまた「可愛いね、綺麗だね」って褒めてくださいね。 愛しています。 里江
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