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「いただきます」
挨拶を済ませ、スクランブルエッグを口に運ぶ。
自分が作るのとはどこか違ってものすごく美味しい。
「こんな美味しいスクランブルエッグ初めてかもしれません」
「本当?良かった」
菜々子さんの笑みが更に美味しさを倍増させた。
住岡さんと菜々子さんは終始笑顔で会話をし、私に対しても適度に話題を振ってくれる。
――美しい夫婦だと思った。今の私には眩しすぎるほどに。
「ごめん、俺もう出なきゃだ」
先に食べ終えた住岡さんが立ち上がる。
「うん。いってらっしゃい」
食事の手を止めて玄関へ向かおうとする菜々子さんを制止し「いってきます」と、軽やかに上着を羽織る住岡さん。その颯爽とした立居振舞に思わず目を奪われる。
私も慌てて「いってらっしゃい」と声を掛け見送ると、菜々子さんとニ人きりになった。
「この先、どうしようと思ってるの?」
菜々子さんはホットコーヒーをテーブルに置きながら、切り出す。
「……離婚するつもりです。そして実家に帰って仕事を探します」
「そう……実家はどちら?」
「静岡です」
「そしたらなかなか会えなくなるわね。私達」
「え、ああそうですね」
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