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結婚してすぐ『家にいるんだからお金あんまり使わないでしょ?必要だったらその都度渡すから』と言われ『美容室に行くからお金くれない?』と言うと『まだ切る必要ないんじゃない?今くらいの長さが俺は好きだけど』と返され、それからニヶ月後ようやくお金を手にして、切りに行くと、美容師さんに『結構久しぶりな感じですかね?』と言われて、苦笑した。
同窓会の連絡が来た時だって、出席する旨を伝えると『ちょうどその日休みだから、一緒に過ごせると思ったのに、何で勝手に予定決めるの?』と苛立ちを見せ、しばらく口を聞いてくれなくなった。
段々と、美容室に行く頻度も減り、ほとんど家にいるせいもあって、伸びても気にならなくなり、今では自分で切るまでになってしまった。
朋美も昔は食事に誘ってくれていたのに、何度も断るうちに声が掛からなくなった。
そんな多少の不満は感じつつも、結婚してから五年間、派手な喧嘩もなく過ごせている事を考えれば、それなりに順調な結婚生活なんだとは思う。第一世の中には、結婚したくてもできない人がいる事を考えたら、私は、じゅうぶん幸せなはずなんだから。
夜。
いつも零時位までなら雅史さんの帰りを待っているけれど、今日は雑誌を読んでいるうちにソファで寝落ちしてしまった。
「やばっ」
涎を拭きながら時計に目をやると深夜二時を回っていた。
歯も磨いてなかったと洗面所に向かいながら、まだこの家には私一人しかいない事に気づく。
仕事が終わって飲みに行く事も多いけれど、火曜日からそんな事するだろうか。
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