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メールじゃ、埒が空かないと思い、電話を掛ける。数回の呼び出し音の後、すぐに声が聞こえてきた。
「何?」
愛想のない声だった。
「離婚届出したって書いてあったけど」
「ああ」
「本当なの?」
「そうだよ」
「何で勝手に?」
「何でって、家出て行ったって事はそういう事だと思うだろ?勝手なのはどっちだよ」
「だからって、離婚届まで出すなんて……」
「どうせお前も離婚する気だったんだろ?連絡しなかったのは悪かったかもしれないけど、手間が省けたんだからいいだろうよ」
怒っている様子はない。ただ淡々と、雅史さんは言葉を並べる。
「確かに、離婚はする気だったけど……」
あきれてそれ以上何を言えばいいのかわからなくなった。何を言っても通じない気がした。
「あ、荷物送るから今いる住所教えてくれよ」
「……荷物なんていらない。捨てて」
「え?本当にいいのかよ。服とかまだ着れるのばっかりだぞ」
私より、服のほうがもったいないと言っているように聞こえた。
「捨てて下さい」
できる限り強い口調でそう言い放つ。
「あっそ。大した物ないから問題ないか。わかった。あと、お前のケイタイ、俺名義なんだよね。今月で解約するからそのつもりで。あと何かある?」
「……ない」
「まぁ、俺は大丈夫だから心配しないでよ。じゃあ」
通話は途切れた。
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