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 話し合いも何もなく届けを出されて終わった、五年間の結婚生活――。  力強く両手を握りしめ、机を何度も叩いた。 『大した物ないから問題ない』雅史さんの言葉が甦る。  確かに――雅史さんとの生活で、服や靴等、自分の持ち物を新調した事などほぼなかった。そして私には仕事もないし、子供がいるわけでもない。そう、その通り。大した物なんて、持って無いんだよ、私は――。夫もなくし、主婦でもなくなった今の私って、一体何者?放心状態になって、その場にくずおれた。  数日経って、朋美に連絡を取っていなかった事を思い出し、電話を掛けた。  住岡さんとの関係、離婚の事、実家に帰った事を一気に報告する。でも、菜々子さんがセカンドパートナーと一線を超えた関係を持っている事は話さずにおいた。もちろん、住岡さんの身体の事も。   「確かに雅史さんは勝手過ぎるけど……でもさ、こう言っちゃなんだけど、気がラクじゃない?発想の転換」  思いがけない返答に戸惑う。 「それってどういう意味?」     
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