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 自分に言い聞かせるように答えた。朋美の言う通り、住岡さんが愛しているのは菜々子さんただ一人。例え私が恋愛感情を持っていたとしても、それは住岡さんを困らせるだけだ。 「……無理しないでね。健太郎君にも釘刺しとく。優花を不幸せにするような事だけはやめなってね」 「うん。ありがとう」  貴重な休みの日に話を聞いてくれた朋美に感謝して電話を切った。  次は、住岡さんに離婚の報告だ。今日は出勤日だと言っていたのを思い出し、メールで伝える事にした。 『夫と離婚が成立しました。お騒がせして申し訳ありませんでした』  本文の後、改行して五年ぶりの旧姓を打つ。 『春野優花』  私に何ができるだろうか。とにかく何でもいいから仕事を探さなくては。朋美に教えてもらった格安スマホを手に入れ、懸命に求人サイトに目を通す。とはいえ、実家近辺で私ができる仕事は限られていて、その中から清掃業のアルバイトを選び、面接の約束を取りつけた。購入したばかりの真新しい履歴書を前にして、なんだかんだ雅史さんの保護の下、生ぬるい生活をしてきたんだなと知る。  後悔してる?答えはノーだ。これからは自分で考え、生きて行く。生きて行ける。未知の未来には不安と共に希望も抱いていた。
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