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季節は少しずつ秋に移ろうとしていた。
今年は特に残暑を感じる事なく、九月に入ってからは急に気温が下がり、しとしとと静かな雨音を聞く日が多くなっていた。テレビでは「これから一雨ごとに涼しさが増します」という言葉と共に、天気図の説明をしている。
先日面接を受けた会社はすんなりと採用が決まり、人手不足という事でいきなりシフトをたくさん入れられたけれど、おかげで早く仕事に慣れる事ができた。
人間関係も特に問題なく、というか希薄で、みんな誰にも構わず、黙々と作業に勤しむ人達ばかりで、気楽だった。たまに大学生バイトの北沢君が話しかけてくるくらいで、明日の休日申請に関しても『どこか行くんですか?デートですか?』と半ばバカにしているようにもとれる口調で話しかけてきた。
「まぁまぁ当たってる」と返すと満足したようだった。
雨は上がったものの、雲は取れず、どんよりとした空が広がっている。
私は久々に東京に足を踏み入れていた。
建物や街ゆく人々は、洗練されているけれど、排気ガスまみれの空気を吸い込むと、そこにはまるで多くの人間の 鬱積が溶け出しているように感じられた。
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