141人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そもそも離婚届なんて、なんで、千景君が持ってるの?」
もう、自棄だ。こうなったら全てをぶちまけてしまいたかった。
「今朝、取りに行ってきた」
「は? こんな格好で!?」
「悪い? だいたい、雪が離婚したいなんて言うから! 俺は雪を泣かすようなこと何かした?
言ってくれなきゃわからない」
そっと触れた手は、頬から流れる涙を拭う。
その手を払いのけ、私は食い下がった。
「だって、毎週毎週、香水とお酒の匂いぷんぷんさせてさ! 言い訳だって、嘘ついてるの丸わかりよ!
嘘つくと、眉毛が上がるんだから!」
「え!?」
彼は言われて気づいたのか、恥ずかしそうに慌てて、左眉を隠し、右手で私の手首をつかむと、自分の顔が見えないように、自分の胸に抱き締めた。
「本当にバカ雪!
嘘だから仕方がないだろ」
「はあー? なに、その開き直り!」
じたばた暴れる私の腕を更に拘束するかのように力がこもる。
「ちょっと大人しくしてくれない?
だいたいさ、そこまで気づいてて、なんで解らないかな……だからさ……その……嘘なんだよ!」
「だから、嘘なんでしょ? 何回も言わなくたってわかってる!!」
「あーもう、面倒くさい!!」
そう言うと私の肩を乱暴に離し、寝室へと消えてた。
最初のコメントを投稿しよう!