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 千景と私はあの日から頻繁に一緒に帰るようになった。家の方角も違うにも関わらず、必ず家まで送ってくれた。  男性から積極的に話しかけられたことが始めての私はこのとき、有頂天で、人生で一番幸福だったとすら思っていた。  そこまでくれば、向こうも気にかけてくれているのかもと、期待をしてしまう。  でも、一つだけ気になることがあった。  それは、プリクラのことだ。  薬指には指輪はしていないが、結婚していても嵌めない男性は多いと友人が言っていた。  何より、プリクラの女の子の頬にある可愛らしいエクボは彼とそっくり同じだった。    日に日に強くなる感情に蓋を出来ず、私は出会って1ヶ月後の別れ際、堰を切ったように聞いた。 「真田さん、ご結婚されていたんですね」 「え? なんで?」  千景は目を丸くした。 「プリクラ……」 「ああ……この子は姪っ子」  目尻を垂らし、携帯から数枚の画像を楽しそうにみせてきた。  子供の好きな人なんだなと思った。  正気に戻った私は急に恥ずかしくなって顔を伏せた。  こんなの、好きだと公言したも同然だ。  私は昔から堪え性がないのだ……自分の気持ちを言わない代わりに、どんどん一人で考えこみ悩み土坪にはまってしまう。このときも悪い癖が出たなと後悔した。だが、千景と結婚した後には、あのときは可愛かったなと、揶揄されることになるのだが。 「ねえ、俺の子供だと思ったの?  それってさ、期待してもいいってこと?」  驚いた、真田さんの声はこんなに低く響く声だっただろうかと思った。まるで、心臓を鷲掴みされたようで息苦しい。  私は俯いていた顔を上げれず、千景のスーツをギュッと握る。  すると、そっと千景の胸に抱き締められた。  始めて接触した男性の体は、硬くて、背の高い私でも覆ってしまえる力強さに安心を覚えた。  
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