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 それから半年。  初デートに、初キスに……順調に段階を経て、私はプロポーズされた。 「真田雪村って武将みたいでよくない?  結婚しよう」  全くふざけたプロポーズだ。  でも、恥ずかしがり屋な彼の照れ隠しと直ぐにわかった。  あれから2年。  私達は赤ちゃんに恵まれなかった。  病院にも行ったが、原因は特に見当たらなかった。  そして、3年目を過ぎ、この何でもない平日の朝にこの離婚届である。最悪だ。だが、昨日、私は耐えきれず、全てをぶちまけてしまったから致し方ない。  昨日も千景は遅かった。  だいたいノー残業dayにも関わらず、決まって遅く、毎週、違う匂いを纏って帰ってくる。  私はもう限界だった。  子供好きの千景が、姪っ子の話しすらしないようにしてくれていたし、それが私には辛かった。  11時頃に帰宅した千景はまた違う匂を纏ってきた。  甘いアーモンドの香り。若い女性の好きそうな香りだと思った。
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