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「離婚しよう」  どういう気持ちで私は切り出したのか、解らない。相手を繋ぎ止めたくて? 謝らせたくて? 本当に別れたくて? けど、何かしらの答えが、言い訳が、私は欲しがったのだと思う。  ただただ、千景は驚いた顔をしていた。  私の目からは大量の涙が溢れて、思い切り彼を押したから、彼はリビングの壁にぶつかった。  悲しそうな、同情に似たの視線に耐えきれず、私は家を飛び出したが、追ってくる気配もなかった。  マンガ喫茶で半日過ごし、昼前に自宅リビングへ。  そうして、今、この現実である。  リビングのソファーに座り、目の前の離婚届と対峙し30分ほど、涙で離婚届がぐしゃぐしゃになり、使い物にならなくなった。  そのとき、寝室の扉が開いた。  そこには会社に出社している時間にも関わらず昨日のスーツのまま、目が赤くボサボサの髪の彼がいた。  私の顔を見るなり、大きな溜め息をつく。 「な……なによ。離婚届出して来てやるわよ」  私は泣き腫らしたパンパンの顔を伏せる。 「全く……」  千景は私の隣に座ると私の両頬に手を当てた。  その手は火照った顔には冷たく、心地よかった。 「(ゆき)が離婚したいならするよ。  けどさ、俺はしたくないんだけど。なんで、いつも暴走するの」  そのとき、左眉は上がらなかったが、寝ていないのだろうか、目が血走っていた。常にのらりくらりと交わし、平穏な彼が、今、醸し出している雰囲気から、苛立ちが感じられる。
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