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髪をとかされる度に頭への刺激が心地よくなるのが悔しい。吸い寄せられるように顔を千景の胸に埋めた。
結局、この男が悔しくいくらい好きなのだ。
だから嫉妬してしまう。
私みたいな普通の無個性の持ち主とは違い、社内は華やかな女性陣で溢れているのだ。
千景は青い傘を開く。見上げた先には空みたいな澄みきった青。ドーム状の一番高いところに見慣れた二人のプリクラが貼ってある。
「これ、証拠。
考えてもみなよ。浮気相手に嫁のプリクラ貼った、女子受けもしなさそうな、こんな青い傘贈らない。
あと、雪は子供のこととか、気にしてるみたいだけど、子供が欲しくて結婚したんじゃないよ。
ただ、雪とずっと一緒にいたかっただけ」
プリクラ……店頭で貼るの恥ずかしかっただろうな。と言うのが、一番の感想だった。そう思ったら、信じていなかった自分に居た堪れない。
「雪? 何、急に……」
背中に手を回し、強く抱き締めた。
「……千景君……ごめん」
「……うん。俺も……隠して、嘘ついてごめん」
傘をさしたまま、千景は空いている手で私の背中を擦ると、そっとキスを落とした。
青いパラソルは私に再び幸せを届けてくれた。
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