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裕二、私なんかと付き合ってくれてありがとう! 幸せになってね。
メールを送信した田村楓。気持ちに嘘をついて。
約1年前、派遣社員として今の部署に配属され、職場の上司の佐藤裕二と出会った。裕二は、楓より、十才上のダンディーな男性。バツイチである。
ある日、楓が仕事でミスをしてしまった時、裕二は怒りをあらわにしてしまった。楓は、落ち込んでいた。
「田村、話がある。ちょっと夜、食事をしないか?」
その日の夜、レストランで二人は食事をしながら話をした。
「今日はキツイこと言って済まない。けど仕事だから仕方ないんだ。気にするなよ」
「そんなこと気にしてません!こちらのほうこそすみませんでした」
頭を下げる楓。
「いいから食べよう、覚めちゃうから」
しばらく二人は沈黙していた。裕二は、やっと口を開いた。
「田村、俺と付き合ってください」
裕二は、照れながら話した。楓は、ためらっていた。今まで誰とも付き合ったことのない自分に告るなんて信じられなかったからだ。しかし、裕二の言葉は自分の気持ちに響くものがあり、傾いていき、付き合うことに決めた。
月日は流れ、楓は幸せの絶頂にいた。
裕二との将来も考えるようになっていた。
数日後、幼馴染みで親友の智美は、裕二との結婚に反対した。
「私、見ちゃったのよ、」
「何を?」
「裕二さんと別の女性と仲よさそうに歩いているところをね」
「まさか?」
「裕二さんに聞いてみたら?」
信じられない楓は、裕二の家へ向かっていた。裕二のマンションから見知らぬ女性と出てくるのを目の当たりにした。
「裕二、これはどういうこと?」
「ごめん、前の女房なんだ。子供が俺と一緒に暮らしたいと言ってきて話し合いしているんだ。あいつ悩んでやつれちゃってほっとけない。勝手だけど別れてくれ!」
楓は、一晩考えて別れを告げようと決意した。自分の気持ちに嘘をついて。
ベランダにでて、5月のさわやかな風を浴びながらメールを送信した。その後に叫んだ。「バイバイ おじさん 今までありがとう!」
楓は、気持ちを切り換えて新しい恋に向かおうとしていた。
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