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   一人になった彼女は、大きく息を吐き出す。  少しだけ、気持ちが楽になった気がした。  それでも、罪悪感の名残なのか、胸の真ん中に穴が空いているような感覚に包まれていた。  ……でも、これで嘘をつく必要はなくなった。  そのことにすがり、彼女は机のバッグに手を伸ばす。 「……あ」  その時、バッグの隙間から見えたのは、彼のノートだった。返すつもりだったが、すっかり忘れていた。 「……これ、どうしよう……」  ノートを手に取り、ぼんやりと見つめる。  すると、それまでの毎日が甦ってきた。  一緒に出かけ、一緒にご飯を食べ、一緒に映画を見て、一緒に歩いて……。  思い返せば胸に広がる、優しくて、暖かい気持ち。柔らかくて、心が満たされるかけがえのない毎日。  心を通り抜けるセピア色の風景の中には、いつも彼がいた。  そして、その中の彼は、いつも彼女に笑顔を向けていた。いつも、いつも……。
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