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同時に僕が思い出すのは――。
いつだったか歪な紳士協定に基づいて
3人でベッドを共にした夜の事だ。
「あの、僕は……お兄様にスープを飲ませているところだったの……」
この腕とこの腕。
「そうは見えない」
「そうかもしれないけど……スープを……」
交互に抱かれた生々しい感覚がよみがえり
喉元までこみ上げた言葉を震わせる。
「スープはスープでも違うスープさ」
征司は子供みたいに破顔して
「そいつを俺に飲ませようとしてた」
「お兄様っ……!」
「『僕のヴィシソワーズはいかが?』てな具合さ!」
あることない事ぺらぺら喋り続ける。
「黙れ――黙れ黙れ黙れ!」
善良な有識者を感情のまま怒らせるまで。
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