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「なるほど」
嫉妬は醜い感情と相場は決まっている。
特に彼みたいな美しい人にとっては――。
「それについては僕も甚だ疑問だったんだ」
細く息を吐くと自分に言い聞かせるように
抑えた声音で九条さんは言った。
「和樹がどうして諸悪の根源みたいな君に依存しなくちゃならないのか――孤独な子供時分ならいざ知らず、今になってもまだ」
今になって――。
つまり僕にはもう自分という男がいるのにという意味だ。
「諸悪の根源か。酷い言われようだがまあいい。傷つくのが怖くないなら明るみにするといいさ」
征司は僕の髪を弄びながら九条さんを見やる。
明らかな挑発行為。
「いや待って、どうしてそんな話に……」
そして僕にとっては
明らかな巻き込まれ事故だった。
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