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どちらの手も借りず助手席から飛び下りると
完全にヤケだ――。
「ごきげんよう。こちらが依存症セラピーの会場?どうもはじめまして。僕は参加者の天宮和樹です。実は重度のお兄様依存症なの」
無機質なビルの受付で
唖然とする受付嬢たちに向かって丁寧に挨拶をばする。
「俺がその兄貴でアルコール依存症らしい」
征司も開き直って笑顔でそう名乗った。
「は、はぁ……」
目の前に現れたのは素面で、スリーピースのクラッシックスーツをびしっと着こなす若き御曹司だ。
「名札をお持ちになって中へどうぞ」
受付嬢たちはより混乱した表情を浮かべながらも
僕らを中に案内してくれる。
「僕は――彼らの保護者です。心配なので見学を」
最後に僕らの後ろで頭を抱えたまま
九条さんが言った。
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