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さて、いよいよ困った。
出席者たちもみな
興味深そうに聞き耳を立てている。
こんなところで
何より九条さんの前で――。
僕の『お兄様依存症』がどんなものなのか
説明しろと何も知らない彼女は言うわけだ。
「まずはじめに――」
征司が愛想なく視線だけ上げて低い声で呟く。
僕の喉がゴクリと鳴った。
だけどそれだけだった。
「答えたくありません。非常に個人的な問題なので」
征司は静かに首を横に振ると言った。
出会ってから初めて
この人が分別ある常識人に見えた瞬間だった。
「なるほど――そうね」
しかし女史はふんふんと頷いたものの
征司のカルテに目を通すと
「それじゃあ違う聞き方をするわね」
――食い下がった。
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