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「あなたのアルコール依存と弟さんとの間に何か、因果関係があると思いますか?」
さすがに鋭い。
尖った眼鏡の奥で彼女は
僕ら兄弟の深い深い闇を覗いているようだった。
それでも――。
「ありません」
征司もまた頑として首を横に振った。
「そもそも自分はアルコール依存症ではありません」
「天宮さん」
意固地な患者の扱いなどお手の物とばかり
余裕の笑顔で女史は再度問いかける。
「ならどうしてここに?」
征司は大仰に肩をすくめた。
「さあね――あそこに座ってる虫も殺さないような顔した男に脅されたからかな」
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