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違うも何も――。
僕に聞いているのだろうか?
それとも征司に?
話が的を得ているだけに
安易に口を開けない。
九条さんは円の外から
驚きと困惑の混じった正直な顔をして
じっと僕を見つめていた。
心理女史が言うところの
僕が特別な信頼関係を築いた人。
「私が思うにアルコール依存は――弟への依存心の隠れ蓑なんじゃないかしら?違う?」
違うか否か聞き返すのが
どうやら彼女の癖らしかった。
「本当のところはあなたの方が弟さんに執着していて、もっとべったり依存したいのにそれができない。だからお酒に逃げているのよ。違う?」
グレーゾーンを残して生きてきた僕らにとっては
それはそれは悪い癖だ。
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