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「ハァ……ハァッ……」
息が苦しい。
「和樹っ……!」
僕はか弱き乙女のように
貧血と過呼吸を起こしてその場に座り込んでしまった。
「ごめん。こんな風になるとは思ってなくて」
九条さんが駆け寄ってくるや
僕を腕に抱き申し訳なさそうに告げる。
「いい……んだよ……僕は……大丈夫……」
いつもの如く
彼は何も間違っちゃいないんだ。
依存症患者にセラピーをすすめて。
運転手役まで買って出てくれて。
「今日は連れて帰ります」
「ええ、その方がいいわね」
九条さんが僕を抱き上げ女史に頭を下げる。
「苦しい?」
「そうでもないよ……」
正直そんなに
身体の具合が悪いわけじゃなさそうだ。
だとしたらこの胸の苦しさは
――共鳴。
征司の苦しみに呼応しているんだと
九条さんの腕に抱かれながら僕は思った。
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