シック・イクサバ・ゲキソウショウジョ

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華乃が目指す長兄の陣地は早馬のリレーでも一昼夜かかる。それをほんの少女でしかない彼女が半日で駆けようというのだ。一人きりで。 男子3人に恵まれた金部は筋骨隆々たる息子たちにかまけて華乃には全く興味を示さなかった。 普通女子であっても薙刀や短刀の使い方等、武家の一員としての教育を施すものだが、一切しなかった。先程の短刀が生まれて初めて手にした武具だ。しかも、名のある名工の作でも家に継承されるものでもなく、ただ単に切れるという道具でしかなかった。 しかし、先程のばばの言葉通り、育成途上で無能どもの影響を受けなかったことが彼女の能力を花開かせた。 決して人を馬鹿にしないことと、疾駆のスピードだ。 武家の作法を学ぶことなくいわば親からネグレクトされる華乃の教育係をばばは買って出た。 「華乃。戦場(いくさば)でも食事をせねばならぬ。兵糧が尽きて野ネズミを食わねばならんとする。捕まえたその後、どうやって食べる」 「短刀で(さば)いて煮るか焼くかいたします」 「女子で下女と同じく調理もばばが躾けておる華乃にとってはたやすいことであろう。じゃが、男子の場合はどうする」 「・・・近隣の村から女子を奉仕に徴用すればよいのでは」     
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