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「バカ者! その間に飢えて敗北するわ! 男子だろうが女子だろうが自分で調理するのじゃ。これは俺の仕事ではないなどと見下して諸事雑事だと軽んじとるといざという時役立たずの人間しかできん。自己の責任を果たせんのじゃ」
「は、はい」
「では次の問いじゃ。領民が飢え果てて領地を耕すことすらできん状態に陥ったとする。領主の責任じゃが・・・目の前の土地を今耕やさんと今年の収穫は絶望的じゃ。華乃、お主は女子ながら甲冑を着、太刀を帯びた堂々たる姿で荒地の前に立っておる。さて、お主ならばどうする?」
「・・・まずは武具を一切外します」
「ほう。それで?」
「代わりに鋤鍬を取って自ら耕します」
「よう言うた! その性根、忘れるでないぞ!」
かようにしてばばに育成された華乃は10歳にも満たない頃、一度だけ長兄に意見したことがある。
「嫌と申すか!」
長兄が棟梁の跡目という絶対的なポジションから同年の家老の子息を『荷物持ち』として扱おうとした。自分が馬の早駆け鍛錬をする際、武具以外の邪魔な荷物を家老の子息に背負わせ、徒歩でついてくるよう命じたのだ。相手が跡目だろうと家老の子息にも武士としてのプライドがあるのだろう。断ると長兄は刀に手をかけた。
たまたま庭でその場に居合わせた華乃が口を開いた。
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