なつのふたり

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なつのふたり

マイが夏らしく髪を切ったのはすぐ分かった。そりゃめちゃくちゃかわいいとも思った。いいタイミングでほめようと思っていたら、ねえっ、切ったんですけどって怒りだしたので、つい、へぇーそうなんだ気がつかなかったよと返してケンカになった。僕たちはお互い反対の駅に向かって歩き出した‥‥だいたいがそれほどの変化に気がつかない訳はないし、演出的に溜めてからの発言は男にはある‥‥と、思うし、そもそも先輩達と海に行くのを決めたのはマイと付き合い始める前で、もちろん付き合い出してからマイには、毎年恒例の男同士の二泊の旅行なんだよただ泳いでくるだけだから安心してね、と話したし、その時は、うん分かったおみやげ買ってきてね、なんて言ってたのに、だんだんと機嫌が悪くなってきて、当日、こんなになっちゃった。なんだよもうマイの奴‥‥僕はとにかく集合場所である先輩の家に向かった。 夜中の二時に車三台で出発した。渋滞をうまくかわして朝七時ぐらいに到着した。早速民宿で着替えさせてもらって荷物を預け、海岸沿いのコンビニで適当に食べ物と飲み物を買って海岸に向かった。まだバラソルもまばらな砂浜。真ん中あたりに大きなビニールシートを敷いた。みんなは楽しそうだし、海の青さと入道雲の白さが僕の胸をくすぐった。でも、Tシャツを脱いでオイルを塗っている時ふと思った。まったく、あれからどうしたか? まだ怒っているのか? それとももう行っちゃったらしょうがないと諦めるか? どうせだからと遊びに行ったか? どこに? 誰と? 舌打ちして大の字になり日差しを浴びた‥‥ ‥‥気がついて、上半身を起こし目を凝らすと、砂浜には多くのパラソルが咲き、人が溢れて大騒ぎになっていた。大音量の音楽がぶつかり合っては空に散らばっていた。だけど波の音はきちんと聞こえてきて、やっぱりここは海かぁと深呼吸をひとつした時、肩をトントンと叩かれたので振り向くと‥‥マイがいた。 マイはケンカの続きをしに来たと僕をにらんだ。 おわり
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