月の夜

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じっと青年を見つめていると 青年が口を開いた。 「君はここのお姫様?」 我に返ったアリアーヌは 慌てて目をそらして答えた。 「はい。アリアーヌと申します。」 青年はアリアーヌに目線を 合わせるように屈んだ。 「俺はランドル。 君がここで退屈そうに 外を眺めていたから 声をかけてみたくなったんだ。」 「そ、そうなんです。 宮殿の中は気位の高い方々ばかり。 だから私、息がつまりそうだったの。」 そう言ってから アリアーヌは自分の言葉に驚いた。 「私ったら、 どうして初めてあった方にこんな話を…。」 「驚いたな! お姫様にもベールに包まれた 本音があったんだなぁ。」 本当に驚いた様子で、 ランドルは言葉を続ける。 「君もここを抜け出してみない?」 「え?ここを?」 「そう!俺と2人で!!」 「あ!もちろん、 明日には君をちゃんと ここに送り届けるよ。」 不安げなアリアーヌに、 ランドルは慌てて言葉を付け加えた。 「貴方と2人で…」 小さくそう呟いた後、 頬をほんのり紅潮させながら アリアーヌは満面の笑みで うなづいた。 ランドルはアリアーヌに 白いバラの花を一輪差し出した。 その美しいバラにアリアーヌは目を輝かせた。 「きれい…!」 「君にあげる。」 「ありがとう。嬉しいわ。」 「白いバラ…君に似てる!!」 そう言って、 ランドルはアリアーヌの艶やかな髪に そのバラを差し込んだ。 アリアーヌは照れたように微笑んだ。 月の光に照らされながら、 目を細めて微笑するアリアーヌは バルコニーの下から眺めていた時よりも さらに美しかった。 ランドルはこの汚れなき姫が愛おしく 手放したくないと思った。
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