月の夜

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2人は宮殿をこっそり抜け出し この国で最も美しいと言われる湖、 アンドルー湖の浜辺に腰かけた。 アリアーヌは湖面に映る月を見つめながら、 このまま永遠に 時が止まってもかまわないと思った。 「ランドル。 私こんな夜遅い時間に 外を出歩くのって初めてなの。 いつもあのバルコニーから 月を眺めながら、 もっと遠くの世界へ行ってみたい、 そして愛する人に出会って結婚して、 その人の為だけに生きたい、 身分や生まれも全て忘れて、 愛のためだけに生きたい。 って考えていただけ。 外へ飛び出そうなんて 1度も考えたことなかったわ。 きっと叶わない夢だと諦めていたから。」 叶わぬ夢を語りながら 小さく笑うアリアーヌは あまりにも儚げだった。 たまらなくなったランドルは アリアーヌの手に手を重ねた。 「俺は愛が何か分からずに 今まで生きてきたんだ。 人を愛するって何なのか… どんな気持ちになるのか… 考えても分からなかった。 死んだ父さんは言ってたんだ。 運命の人に出会ったら必ず分かるって。 お前はまだその人に 巡り会えていないだけなんだって。」 そう言うと、ランドルは自分の体を アリアーヌの方へ向けて、 アリアーヌの透き通るように白くて 細い両手を握った。 「アリアーヌ。 俺、バルコニーで君を 一目見て分かったんだ! 君こそが俺の待ち続けていた、 探し続けていた人なんだって!!」 真剣な眼差しで見つめる ランドルの手を握り返して アリアーヌは口を開く。 「貴方が宮殿を抜け出そう って言った時世界が違って見えたの。 ここに来るまで、私ずっと 夢を見ているような気分だったわ。 今までに味わったことのない 幸せを感じているの…」 幸せそうな笑顔を向けるアリアーヌを ランドルはギュッと抱きしめた。 アリアーヌもランドルの体に そっと手を回した。 月の輝く夜の浜辺で 2人はそっと口づけた。 恥ずかしげに下を向くアリアーヌを ランドルはもう一度抱きしめた。 それから2人は 月が沈み朝陽が昇るまで 語り明かした。
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