第1章 そんな事を言われても…

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第1章 そんな事を言われても…

奥居弘(おくい ひろし)は今日が自分の22歳の誕生日だと言うのに、血相を変えて全力疾走していた。 格闘ゲーム世界大会の日本予選の会場までは実家から1時間30分かかるのに、電車の事故で間に合うかギリギリだった… 弘が参加するゲームは「ファイブゴッドナックルズ」と言う3D格闘アクションゲームで稼働してからというもの、世界的に爆発的な人気を呼び、あっという間に大人気となり、1年と経たずに世界大会が開催される運びとなり、今日はその日本予選の当日を迎えいていた… 「仕事まで休んだのに、クソ!!…」弘は息も絶え絶え愚痴りながらも、時間に間に合わせようと必死で走っていた。 弘の勤務する会社は今年で創業50年を迎える中小企業で、地味な仕事ではあったが、食うに困らない程の給料は貰えていた。 上司の今沢公二(いまざわ こうじ)は嫌味な男であったが仕事が出来る人だったので 会社での信頼は厚く、弘も何だかんだと世話になっていた。 「奥居!…今週末休み取っているが、大事な用なのか?」今沢はあいかわらずの上から目線で弘に尋ねた… 「え?…ええ、ちょっと急用で…」弘はしどろもどろになりながらも嘘ではないが、今沢の質問をはね除けた… 「そうか…まあ、俺も休むけどな!」今沢は強気で言って退けた。 「じゃあ言うなよ!」苦笑いする弘の心が叫んだ。 会場は目の前に見えてはいたが、息があがってしまい走れなくなってしまった。 すると後方から、音楽と賑やかな少年達の話し声が近づくと弘を自転車で掠めていった。 「チッ!」弘は反射的に舌打ちをして睨んだ。 3人いた自転車の少年達の1人が振り返り、右耳のピアスを揺らしながらジロジロ品定めするように自転車こぎながら何度も弘を見て、50メートル程離れたかと思うと 「だいぶ、息あがってますよ~!だいじょうぶですか~!」大声で捨て台詞の様に言うと 会場方向へと3人は消えて行った。 「………根性なしめ!」弘は苛つきを言葉にすると会場へと急いだ… 会場に近づくにつれ、人が増えていき弘が到着した頃には会場周辺は人々でごったがえしていた… 会場入口には、大々的に大型看板が掲げられ、 「ファイブゴッドナックルズ世界大会 日本予選会場」と描かれていた。 汗だくになりながらも弘は出場登録を済ませようと、必死で参加者の列を探し周りを見渡した。
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