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打者はオレに舐められていると思いかなり憤慨している。
今日から、全国大学校野球大会の地区予選が始まった。
我が雅夢陀羅大学は奇跡のゼロ失点で七回の守備を終えた。
ナインたちもベンチにいる者たちも誰もが泣きそうな顔になっている。
まず初回に点を取られない試合は皆無だったので、
常にベンチにいる者はずっと泣いている。
だがさすがにグランドに立つ者は泣いてはいられないので
懸命にボールを追いかけている。
「覇王君に全てを託すわ…
きっとあなた次第で勝っちゃうと思うから」
キャプテンの錬国皐月がオレにバットを差し出した。
「…ああ、あなたのバットも握りたい…」
皐月は余裕だなとオレは思って、少し笑みを浮かべ
皐月に頭を下げてバットを受け取ってグランドに一歩踏み出した。
出てきたオレを相手チームの全員が睨み付けている。
どうやら先ほどのオレの緩慢プレーが気に入らなかったようだ。
オレはデモンストレーションとばかり軽くバットを振ったが何の反応もない。
「…師匠、それ無効…
バットが全く見えてないから…
半分のチカラで…」
源次がオレの耳元で囁いてくれた。
「ああ、なるほど…」
オレは相手チームにオレのバットスイングが見えるように
何度もバットを振り回した。
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